迷惑メールことスパムメールを撲滅するためにはどうすれば良いのだろうか。
と、いうテーマが(非PCユーザーやライトユーザーにも)広まったのはごく最近だと思います。最初に書いておきますが、僕自身は「これがベスト」という方法論を提示できません。この記事で書きたいことは「スパムメール対策」として現時点で挙げられている全ての方法には弊害がある、という話です。いまだに非PCユーザーには「スパムメール」という単語が浸透していない(リアルで周りにいる非PCユーザーに聞いてみて下さい)以上、今後この言葉が浸透する頃には「スパムメールを何とかしなければいけない」という論調はますます強くなっていくのでしょうし、その時に効力のない対策を進めようとする人間や大いなる弊害のある対策を進めようとする人間に対してどのように対応すべきか、というアウトラインです。
現時点で「スパムへの対抗策」として挙がるのは下記のような方法論だと思います。
□1:不用意にメール送信元サービス業者を儲けさせない
例えば、宣伝メールを送ってくるような出会いサイトに金を払ったり通販サイトで物を買ったりしない、という話ですね。
実はこの記事を書こうと思ったのは、IT media LifeStyleでコレを結論にしている記事を発見したからなんですが。
そして筆者は、メールを受け取る側がスパムメールの内容に乗せられて、サービスを利用したり何かを買ったりしないといったことが、最も大きな抑制につながるという点を強調しておきたい。広告とは、効果がないところには資本投下されないものなのである。
IT media LifeStyle内「いよいよ始まるスパムメールへの反撃 (3/3)」より
単純化して言えば「行政やら技術やらには限界がある、市民一人一人が〜」という例の論の延長線にあるこうした論理は、対スパムメールに関して言えば全く機能しない、ということを最初に書いておきたい。この論理は「郵便や電話を使った宣伝への抑制」では一定の意味を持つけれど、その理由は「発信元が資本を投下している」という一点に過ぎない。1,000人に葉書を送れば50,000円。電話をかければ10.000円。
1億件程度のメール・アドレスは100ドル以下で入手できる。コストもかからない。スパムに対する返信率がわずか0.001%でも採算が取れるほどだ。
IT Pro内「スパム送信業者はもうかる,だからスパムは増える」
アドレスはbotで収集し放題。メールを送るコストはニアリーイコール0円(電気代)。「効果がないところには資本投下されない」は正しいが、「スパムに対する返信率」が0にならない限り「効果はある」のだ。そして僕は前にフィッシング詐欺に関しても同じことを書いたけど、「スパムに対する返信率」は決して0にならない。
□2:行政による規制
だからこそ、スパムを規制する場合は「市民の力」とか「市場論理」に頼ることができない。ならば行政に、というのが普通の順序だと思いますが
おそらくスパムメールを発信することで荒稼ぎしている者にとっては、50万円ぐらいの罰金など屁でもない金額だろう――というかその程度の罰金でピイピイする儲けしかない商売なら、そもそもこんなに増えるハズはないのである。
IT media LifeStyle内「いよいよ始まるスパムメールへの反撃 (3/3)」より
スパムメールは、必ずしも「出会い系サイト管理人」や「ショッピングサイト管理人」の手によって送信されているものではない。いわゆる「スパムメール送信業者」と呼ばれる第三者が(出会いサイトやショッピングサイトからの受注で)送信する場合が多い。元々海外鯖で運営されている出会いサイトやショッピングサイトの話をせずとも、送信業者は海外にも存在する(というかむしろほとんど海外)。あるいは出会い系サイトに雇われたバイト(ほとんど♂)がバイトの一環として送信している、いわゆる「友達や間違いメールを装った」メール。行政は「何処に」「どのように」介入するのだろうか?即ち、「効果」という話をする前に「行政介入」という方法論自体が一定の限界を持っている。
□3:ブラックリスト型フィルタリング
簡単に言うと「このメールアドレス(メールサーバー)からのメールはスパムなので弾く」というフィルタリングをプロバイダーや個人が行う方法です。ここらへんはネットワーク系に興味がない人は本当に興味がない話だと思うので簡単に説明しますが、「メール送信サーバー」というのは別に特殊なマシンではありません。RadishとかSMTPサーバーツール入れれば僕のマシンも「メール送信サーバー」です。そして、メールアドレスは送信者が任意に偽装可能な代物です。故に、「ブラックリスト」という方法は原理的に限界を持っている。単純な話をしますが、仮に僕が自分のマシンからtokix.net宣伝メールを送りまくったとしましょう
- 自分のマシンからメールを送りまくってブラックリストに入ったら回線再接続でIPアドレスを変更すればよい
- 送信元にしていたアドレスがブラックリストに入ったら「送信元アドレス」を変更すればよい
「メール」というシステムでは原理的にブラックリスト型フィルタリングは根本的な対策にはならない。
上で書いたのは「原理論」であって「現実論」では無いです。現実にはスパム送信業者は第三者を中継してメールを送信することが多いのです。故に「スパム業者に目を付けられ中継に利用されまくっているサーバー」をリストに追加することが「無意味」とは言いませんが(業者に「新しい中継鯖探さなくちゃ」と思わせる効果はある)、□1で書いたのと同じ論理で、「中継に利用できる鯖」が無くなることはない。
□4:受信サーバー上でのヘッダフィルタリング
携帯電話の「ドメイン詐称メール拒否」が、この方法論が(大々的に)用いられた最初の例なんじゃないでしょうか。これに対しては「無意味」と言うつもりはありません。一定の効果を挙げることが可能でしょう。ただし、この方法は「プライバシーの侵害(個人から個人へのメールの内容がチェックにかけられフィルタリングされる)」「情報流出の危険性」といった話に繋がるだけでなく、「お前ら俺が想定する『普通の方法』を使えよ」という傲慢であることを、僕は2004年の間にもう一度言っておこうと思います。
自前SMTPでFromを転送アドレスとかにすると普通に弾かれる時代なような気がします。結局それもまた「お前ら俺が想定する『普通の方法』を使えよ」という傲慢であり「うちのサイトはIEでActiveXオンにしてないと一切見れませんが別に問題無しだろ?」というのと何も変わらないことに気付いて欲しいと思う。
携帯電話が「ドメイン詐称メールを削除」という設定を付けて以来、携帯メールに対する返事をPCから(Fromを携帯アドレスにして)送る時に「こいつ詐称メール切り設定してるのかなぁ」と不安にならなければいけなくなった。何で家にいてPCの前に座っている時に携帯でメール打たなくちゃいけないのさ。と、いう、これがつまり、ある人間にとっての「お前ら俺が想定する『普通の方法』を使えよ」なんだ。
よい子のためのスパムメール除去講座
「電子メール」は、少なくとも登場期〜現在(の携帯以外)は□3で述べているような代物です。□4の方法論というのは「スパムメールを消すために『メール』を変質させる」という論であることを、2004年において当サイトを読んでいる暇人インターネットユーザーは考えて欲しいと思うのです。
□5:クライアントによるヘッダフィルタリング
現時点で最も効果を上げていると思われる対策ですが詳しくは「よい子のためのスパムメール除去講座」に書いてます。ただし、この方法では決して「100%」スパムを除去することはできない。
スパムを振り分けている「ゴミ箱フォルダ」を時々覗いてみるというのが日課になった。結局はフィルタリングしたはずのスパムを、いちいち見ているのである。まったく何のためのフィルターなのかわからない。
IT media LifeStyle内「いよいよ始まるスパムメールへの反撃 (1/3)」より
さらに、「電子メール」の普及は「メールを様々なクライアントで受信することができるようになる」ということでもあり、早い話現状携帯電話でフィルタリングを行うのは不可能だ。携帯電話が常時接続当たり前/Javaあたりを使ってフィルタリング可能になったとしても、その頃には冷蔵庫でメールが読めるようになっているかもしれない。
と、いうことで結論のない文章を書くのは酷いなぁ、とも思うんですが、2005年にますます盛り上がるであろう「スパムを何とかしよう」という世論の中でこの記事を一瞬でも思い出し「スパムのない明るい世の中を作ろう」と思って貰えれば嬉しいです(誰だ俺は)。