SBMはネガタグで十分に機能する
「タグ」というものは、少なくとも現時点においては、「主観」を担当する物だ。つまり
- 客観(例えばあるページがどのようなテーマについて書かれた物か)
- 主観(それが興味深いか「これはひどい」か)
という選択肢において。
従って「はてブ」などSBMのネガタグは必要悪ではない。
というより、「ネガタグは悪であり消していかなければならないものだがSBMには未来がある」に対して、その「未来」が、「ネガタグは悪である」によって狭まるのではないかという疑問を提示する。
タグは、現実的なことを言えば「自然」な概念ではない。我々のPCやネットは既に「タグでない何か」(例えばファイルシステムに関して言えば「ディレクトリ」)によって管理されており、「タグ」は追加された/される概念だ。そしてそうであるが故に、「タグ」と「ディレクトリ」の混在は、「管理の複雑化」を招く危険性がある。
単純な例を挙げれば、例えば「pv\Perfume\love the world.avi」というファイルを動画管理ツールに登録した後、更にこのファイルに対して「PV」「Perfume」といった「タグ」を手動付加する必要があるならば、それはただの無駄手間だ。「Perfume」というキーワードがパスに含まれるファイルを抽出する手段、もしくは「PV&Perfume」を抽出する手段があれば事足りる。
ちょっと誤解がある気がするので確認しておくが、「PV&Perfume」といった「キーワード」を毎回入力して動画を探すのが面倒だから「PerfumeのPV」タグを付けておく、そうすればワンクリックで済む訳だし……というのは「タグの魅力」ではない。それは「タグ」などという新たな概念を持ち出さずとも実現可能な話であり「iTunesで椎名林檎と東京事変の曲をまとめて表示させるスマートプレイリストを作る」とかと同じだ。
……そして、これがSBMとどう絡むのか、なんだけど。
一番分かりやすい例、つまり現時点で既に実現されている例が、おそらくYourFileHostエロ動画の検索だと(マジな話)思うので、ここではYourFileHostを使う。
YourFileHostには「動画検索」という機能がない。故に普及するのが「YourFileHostの動画を紹介する(だけの)ブログ」というものであり、そして、それらを使ってYourFileHost動画をデータベース化するサイトだ。

前者の例が上。動画の内容を説明している。

そして後者の例が上。そうしたブログをクロールし、紹介されていた動画をデータベース化している。ここで出ている「ジャンルタグ」「女優タグ」というのは、外見としてはSBMのタグ(「iPhone」「ウェブサービス」といった)に近しい訳だが、動作原理上、タグではない。ただ単に、ブログページ上のキーワードを拾い、それを「タグ」として扱っているだけだ。だからこれらのデータベースサイトで行う「タグ検索」というのは、実は「キーワード検索」なんだ。上記の例では「レースクイーン」が抽出されているが、一歩推し進めれば、例えば「エロ動画紹介においてRQがレースクイーンな意味の隠語」であるなら(いや知らん、多分そんな隠語はないけど)、「レースクイーン」というキーワード検索を内部動作的に「レースクイーンorRQ」とすれば良い。それは「タグ」という新たな概念を登場させずとも可能な話だ。
上記のようなデータベースサイトを非難するとか、そういう意味ではない。「キーワード」という方法論には、この「可能性」があるという意味だ。……別に「エロ」に限らず「エロ動画みたいに狭いレンジの分野だと実現が容易(だから既に実現されている)」ということなんだけど(「結局技術は実践レベルにおいてはエロから普及していく」とかいう話なのかもしれないけども)。
「はてなブックマーク」にも「キーワード」という機能は存在する。が、機能していない。機能していない理由は単純だ。「並列」である「タグ機能」とかぶっているから。
あるウェブページが、何について書かれているものなのか。例えば「iPhone」なのか「ウェブサービス」なのか。それは、原理的には「キーワード」によって検出可能な情報だ。もちろん、「ウェブページ」に対してそれを行うのは、「エロ動画紹介」に対してそれを行うことより数百倍程度は難しい。しかし、不可能ではない。例えば「ウェブサービスに関して書かれているウェブページ」というものは
- 「ウェブサービス」というキーワードが出てくる
- 「ログイン」というキーワードが出てくるが「Windowsにログイン」というキーワードがない
といったような「スマートサーチ」によって抽出可能だ。
別の言い方をすれば、いわば、あるウェブページに対して「ウェブサービス」といったタグを付加するという行為は、「キーワードの補完」だ。本来、ウェブサービスに関して書くウェブページは全て「○○というウェブサービスが〜」といった記述を行っている「べき」なんだ。ただ、実際には「ウェブサービス」というキーワードが出てこないウェブサービス紹介ページが多数存在する。この、「足りないキーワード」を閲覧者が付加するという行為。SBMは、ある側面において、この機能を有している。これはもちろん一定程度に「有用」な機能であり、「ネガタグのないSBM」においても実現可能な像だ。
ただし
例えばファイルシステムに関して言えば「ディレクトリ」と並列
な存在である「タグ」……一応書いておくと、ファイルシステムにとってのディレクトリは、ウェブページにとってのURL(ディレクトリ構造に近しい)やキーワード(ファイル名に近しい)だ……には、もう一つの役割がある。そしてどちらかと言えば、これこそが「タグでなければ実現不能」な、「真にディレクトリ/URL/キーワードと並列になる」役割だ。
「そのウェブページが閲覧者の主観においてどのように評価されるのか」。
それこそ「Web2.0」でも良いが、多数決主義(分かりやすいようにこの言葉を使うが、当サイトは基本的に現代のウェブが「一人一票の多数決主義」に向かっているかどうかには大きな疑問を持っている)に向かっていくウェブは、この原理故に大きな問題を抱えている。「それがポジティブなのかネガティブなのか分からない」ということだ。「愛の反対は無関心」ではなく「愛の反対は悪意」となりやすい。パストラックのような方法論(あれは完全な多数決主義)は確実に、少なくとも現代のウェブにおいてこの問題を抱えているし、Googleウェブ検索もそうだ。「tokix.netを叩くためにリンクを貼る」という行為が、実はtokix.netのPageRankを上げることに繋がっている。
ウェブに「タグ」を持ち込む。そのスタイルを現時点で唯一実現しているのはSBMで、「これはすごい」「これはひどい」だ。つまり、(その実現性を無視して言えば)「tokix.netのPageRankが叩きリンクで一瞬上がり、微々たる『これはすごい』によってもう少し上がり、しかし『これはひどい』の量で下がりきれば良い」のだ。
……この行間は読んで貰えるか不安になったので説明しておくと、「ポジタグだけがあれば良い、ネガタグは無くなった方が良い」という、いや、性格良い人なんでしょうけど、その手の意見に対しては、「思想的対立が激しい記事はどう扱われるべきなんですか?」という、具体例を出すと色々不穏になる気がする反論を提示しておく。
そして、もう少し現実性のある例が、前のエントリーで出した
- 国内主要ニュース(朝日でもNHKでもCNNでも)のRSSをクロール
- パストラックから視聴率を集計(「最大瞬間風速s以上」かなぁ)
- はてブでノイズタグ(「これはひどい」とか)が多い記事を除去(たぶんこれやらないと「女子高生を泣かせた」とかそんなんばっかになる予感が)
- RSS生成
であり、もっと言えば、例えば
- PVが多いページは皆が読みたいページ
- でも「あとで読む」タグが多いなら、そのページを読むには時間がかかる/内容が難解
- 故に「休憩時間に流し読みたいページリスト」というRSSには、「あとで読む」タグが多いページは不要
といった判断だってあり得るだろう。「あとで読む」も十分に有用な「主観によるタグ」だ(「ポジ/ネガ」が重要なのではなく「あなたの主観によるタグ」が重要であり、「ポジ/ネガ」はその一例/代表格)。
タグは、何かと「並列」にならなければ、何かを「補完」するものにしかなり得ず、タグが何かをリプレイスすることは極めて難しい(つまり、はてブに関して言うならば、Googleキーワード検索を殺さなければならないし、それは「はてブ」の目指すものではないはず)。そして少なくとも現時点において、「タグ」は「主観」という意味においてのみ、完璧な機能を果たしている。
SBMは、「コミュニティ」であると同時にウェブにとって重要な機能を持ちうる存在だが、少なくとも現在までのSBM(「の利用方法」という言い方が正しいんだろうか)で、ポジタグ/ネガタグ以上の「機能」は登場していない。
蛇足になるが、はてブコミュニティが考えるべき事は、例えば「これはひどい」タグの(主観的な)意味だ。「そのページ自体が酷い」のか「そのページで言及されている物が酷い」のかの区別。その二つは主観において全く別の意味であるはずなのに、同じタグが使われている。

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