「Googleなしに廻らない世界」
※9/6追記
「全体を通してのスタンス」とかそこらへんに関して誤解を招く気がしたので部分修正
Microsoftがやろうとしていた事は、「Microsoftなしに廻らない世界の構築」だ。それが世界を支配するということで、Googleは同じ事をやろうとしている。そのこと自体が「悪」であるのかどうかは、僕には何とも言えないのだけれど。
Microsoftは「悪」であり、しかしGoogleはMicrosoftと違う。
おそらく、このスタンスが一番、この話を伝えやすい。はずなので、本記事は上記のスタンスを想定して書く。この台詞をとりあえず前提として受け入れてくれてもくれなくても構わないが、しかしこの台詞は、「Googleは第二のMSとならない」を意味している訳ではない。むしろ、「GoogleはMicrosoft以上の悪になろうとしている」と言えない訳でもない、からだ。
Chromeは、Gearsからの流れで語られるべきソフトウェアだ。
IEやFirefoxのプラグインとして公開されたGearsは、当初「GoogleDocsなどのウェブアプリをオフラインで利用するための技術」と紹介されていた。だが、Gearsの本質はそこにはない。「オンラインで使うウェブサービスをオフラインでも利用できる」は、あくまで「活用例の一つ」だ。Gearsは、「ウェブサーバーとローカルマシンを含む領域の中でアプリケーションを動かす技術」と言った方が本質に近しい。
Googleが急速にマイクロソフト化してきている。
僕の個人的な「感想」は、おそらく上記のTechCrunchの人のそれに近しい。この結論に至る「流れ」について書く。もちろんこれは僕の思考回路なので、TechCrunchの人と同じかどうかは知らない。
ウェブサービスは復興した……というのは、それこそ「Web2.0」という言葉と絡めても良いし、「結局WinnyよりYouTubeでPV落とす方が早いのよね」と言っても良いが、とにかく、ある固有の「流れ」として存在している事象だ。ウェブサービスは、サーバー上で動作するアプリケーションに対してローカルのブラウザがリクエストを送信し、レスポンスを受けて静的なウェブページを表示する、という、ただそれだけのことの繰り返しとして成立している。この限界性を突き破ったのが、例えば、Ajaxであった。
……と、いうのは、おそらくネットの何処ででも見ることができる「無難な」解説であるが、実は、あるレイヤーにおいて、この限界に最初に挑戦したのはAjaxではない。Microsoftの、ActiveXだ。
ActiveXとは……という解説は割愛する。よく理解していない人は「Windowsアップデートは、ActiveXによってローカルをスキャンし、適応されていないパッチをサーバー上で見つけ、ローカルにインストールさせている」という事さえ分かっていれば十分だ。問題にすべきは、なぜActiveXは「悪」である、と言われているのか、だ。
ウェブの標準化。
なぜあなたのサイトがIEで表示できても、それだけだと文句を言われ、「構造化」とか「W3C」とか、そんなウザったい台詞に晒されなければならないのか。模範的な回答は、おそらく以下になる。
「それをIEが偶然表示できていたとしても、あなたのサイトはWindows上のIEやFirefox、MacやiPhone上のSafari、PS3やWii上の独自ブラウザ、携帯電話上のフルブラウザ、最終的にはテレビや冷蔵庫がそれ自体として搭載している何らかのブラウザからアクセスされうる。全てのブラウザからアクセスできるインターネットは、『標準化』の中でしか形成できない。」
ActiveXは、ご存じのようにIEの独自仕様であり、つまり僕も君も、WindowsアップデートにはIEを利用しなければならない。
実現しなければならない未来のインターネットにとって、ActiveXは「悪」である(と言われている/ことがある)のだ。
では、専用プラグインを入れなければ動作しない「Gears」は悪ではないのか、という問題だが、おそらく、悪ではない(少なくとも、Gearsを「それがActiveXと同じだから」という理由で批判する言論を見かけた記憶がない)。標準的なブラウザでも、GoogleDocsでワープロ文書を作ることができる。「それをオフラインでも行える」という、いわばプラスアルファのためにGearsが必要だということであり、ただ、それだけのことだからだ。
しかし。
Gearsは、「ウェブサーバーとローカルマシンを含む領域の中でアプリケーションを動かす技術」と言った方が本質に近しい。
ウェブサービスは、ユーザーに関する大量のデータ、例えばあなたが「はてブ」でブックマークしたページのタイトルやアドレス、mixiで送受信したメッセージのデータ、を、貯蓄している。このデータを対象とした検索を行えるのは、通常、ウェブサーバーだけであり、ブラウザはその「レスポンス」を受けることしかできない。Gearsは、たとえば、そこに踏み込む。
参考:TechCrunch Japanese アーカイブ ≫ MySpaceがGoogle Gearsでメッセージ処理、Facebookにお手本示す
端的に言えば、アメリカ版mixi(凄く乱暴な説明)ことFacebookにおいては、ウェブサーバーから受け取ったデータ(具体的にはユーザーが受け取ったメッセージのデータ)をクライアント側で検索したりソートしたりする、そのためにGearsが機能している。例えばExcelでソート条件を変更するのが一瞬であるのと同様、Gearsによるソートも一瞬で、クライアントサイドで行われる。
いずれ、我々は例えばmixiを、以下のように利用することとなる。
- Windows+IE+Gearsからログイン
- Windows+Firefox+Gearsからログイン
- iPhone+Safariからログイン
- Android携帯+Gearsからログイン
- PS3+独自ブラウザからログイン
- 冷蔵庫+独自ブラウザ+(冷蔵庫ブラウザ用)Gearsからログイン
Gearsによる機能は、Gearsのある環境、つまり上記の例ならPCとAndroid携帯と冷蔵庫からのログイン時にのみ、利用できるのだ。SBMのように、著作権などとも絡むサービスなら尚更、「ウェブサービス」と「ウェブとローカルの領域で機能するアプリ」の差は大きいだろう(例えばブックマークされたページのソースを、サービス側で保管することには問題がなくもないが、ローカル側なら何の問題もない)。
Googleが独自ブラウザをリリースした、そのコンセプトや意図を計りかねている人も多いように思えるが、コンセプトも意図も、明確だろう。漫画にもあったように、「ウェブサービスをアプリケーションとして使うためのブラウザ」だ。GMailのショートカットをデスクトップに作成できる、その一点からも明らかじゃないか。
ユーザーは、V8エンジンによる快適な動作のため、もしくはいずれGearsによって実現される「ウェブサービスの新しい機能のため」に、例えば「GMailというアプリを使う手段」「mixiというアプリを使う手段」としてChromeを利用する。高速なレンダリングとJavaScript処理、Gearsの高速動作は、このためChromeにとって欠かせないポイントだ。
一応別記事で軽く批判しておいたが、「メインブラウザとして利用するにあたって必要な機能」など、Chromeにとっては「二の次」だ。「あるウェブサービスをアプリとして利用するための最適解」となれば、それでChromeはChromeたり得る。「ユーザーのメインブラウザ」という座は、その後で狙えば良い(し、「10のウェブサービスをアプリとして使うために利用している」ユーザーは、むしろ何もしなくても勝手にChromeをメインブラウザとして利用するかもしれない)。
「Chromeが、あなたの(IE|Sleipnir|Firefox)の代わりになるか」というのは、実はどうでも良いことなんだ。重要なのは、例えば、「ChromeによるGMail利用が、あなたの(IE|Sleipnir|Firefox)によるGMail利用の代わりになるか」なんだ(そして、おそらく、少なくとも近いうちに「代わりになりうる」)。
そのとき、Gearsも動かない、例えばiPhoneは、「mixiを使う上で著しく劣った手段」にしかなれないのだ。そしてIE+Gearsは、「mixiを高機能に使うための入り口」として機能するだろう。パソヲタかどうかなんて関係ない。mixiナンパのためにも、まずはIE+Gearsを使い、使い慣れて不満も出たときにChromeによる「mixi」ショートカットをデスクトップに置いておくことは重要なのだ。
Googleの、例えばChromeを使った個人情報収集……などというシナリオ(今後の可能性としての)は、まぁ、「悪を語るシナリオ」だけど、そんなに、Googleは「分かりやすい悪」にはならないだろう(少なくとも、なる意味がないので、もし実際になったとしたら単純にGoogleがバカだというだけだ)。
Googleは、少なくともGears〜Chromeという流れにおいては、ただ、Googleなしに廻らない世界を作ろうとしている。「それがGoogleの行うウェブ広告を長期帝国化させる」といった話は、少なくともGears〜Chromeという流れとは関係ないし、また別の問題だ(例えば「ビジネス」など)。言ってしまえば、「WindowsOS」とも「IE専用サイト」とも「ActiveXサイト」とも違う形で、ただ、世界を、支配しようとしているんだ。
※参考
当サイトでも、こうした観点による記事をいくつか公開してきたが、Gearsは、おそらく法的な問題(後述するTechCrunchの人も書いているように)もあるんだろうけど、あくまで「ウェブ」「プラットフォーム」の中で支配を行おうとしている。だからその意味で当サイトの、以下の記事は、間違っていた(し、根本的な部分での方向性では合っている、と思う)。
Googleが作ろうとしているのは、WindowsOSもMacOSもどうでも良く、ただGearsやChromeによって「完成」するウェブアプリが形成するインターネットだ。おそらくそれが、TechCrunchの言う「ChromeブラウザはWindowsOSに対するキラー」という表題の意味であり、また、「GoogleのMicrosoft化」だろう。
私は使いもしないうちからすでにChromeが気に入っている(近々使うこともないだろう、Windowsでしか走らないから)。しかし、Googleが野放しに成長を続ける日々も遠からず終りを迎えるかもしれない。Googleが急速にマイクロソフト化してきている。
それが「悪」であるがどうかは、正直言って僕には分からない(というより、この意味での「善」「悪」というものに僕は関心がない)。ここまでの文脈を「こいつは何を言っているんだ?」と思った方は、おそらくActiveXやFlashとGearsを完全に別のものとして捉えているはずだが、そのレイヤーで物を考えれば、当然、そうなる。僕がここで書いているのは「おそらくTechCrunchの人はそのレイヤーの話をしているのではない」ということに過ぎない。
ただ、いずれにしても、これらは(早い話、プログラマーではないし、広告業界で稼ぐ気もない)僕とは違うレイヤーにおける「世界」の話であり、少なくとも僕は、MSXやFM-16βを弄っていた頃にWindowsを求め、そして現在Googleを求めている。そもそも「Microsoftが悪である」を前提に、しておいたが、その理由が「60億人に2万円のOSを数年ごとに買わせようとする点」にあるならば、Googleはその意味での「悪」にはならないだろう(直接的に金を払わせる必要がないからだ)。ただ、それは既に書いたように別の問題だ(例えば「ビジネス」など)。
「野放しに成長を続ける日々も遠からず終りを迎える」かどうかも、また別の問題だ(例えば「法」など)。
このレイヤーにおける「世界」は、どのような存在の手によって、どのような方法によって進むべきなのか、進みうるのか、進んだ場合が最も効率が良いのか……といった話を、この記事では一切書いていないが、ただ、Gears〜Chromeは、Googleがその「支配者」になろうとする流れだ。それはMicrosoftがやろうとしたことでもあるが、Googleのやり方は「違う」。その違いが、「どちらも善である」を意味するべきなのか、「Microsoftと違ってGoogleは善である」を意味するべきなのか、もしくは「GoogleはMicrosoft以上に根が深い悪である」を意味するべきなのか……と、いう、問題も、実のところ、また、別の話だ。

Comment