Geckoの時代は迫っているのか
「MozillaがIEを超える日は来るのか」への補足です。
実はこの記事をMT版公開前に臨時トップページに貼っていたら「タブブラウザ推奨委員会」のめるてぃさんに掲示板で反応を頂いてたので(そして僕はMT版の準備をしていてリアルタイムで気付かなかった)ちと補足を、と。
んー、いいこと書いてるな。
でもSleipnirやLuna2、Maxthonの正式なGecko対応はまだまだ先のような・・。
単純にWebページ上で右クリックしたときのメニューだって、当たり前だが全然別物が出るわけで
操作性の違いという溝を、ブラウザの方で埋めるのは結構大変な気がする。
タブブラウザ推奨委員会掲示板内「雑談スレッド Part2」より
その通りなんですよねぇ。Sleipnirの中の人は開発ペースが異常に凄いので「1.70で正式対応予定」という言葉を信じ期待しているのですが、「どちらのエンジンを利用していても操作面で違和感を感じない」という状態を目指すには様々な面で障害がありますし。「右クリックメニュー」に関しては「Mozillaを使っていてもIEと同じメニューが出る」というのは実際不可能に近いように思えます。Sleipnirって独自右クリックメニューがデフォルト(でしたよね?実は僕はIE右クリックメニュー派だったりするのですが)なので、そのデフォルトをGeckoにも使う、という方向性なのかな、とか。
さて、「MozillaがIEを超える日は来るのか」では前提としておいたんですが、ちとどの程度の人が理解しているのか不安な箇所があったので書き足しておきます。
我々が一般に「ブラウザ」と称する、ネットサーフィングのために使っているこのアプリケーションなんですが、このアプリケーションの中で実際にページの描画等根本的な処理をしているプログラムは「ブラウザエンジン」と呼ばれます。ある種の言い方をすれば、ブラウザとは「ブラウザエンジンを制御するための外枠的なプログラム」です。「ブラウザ」と「ブラウザエンジン」が一対一対応をしていればわざわざこういった区別をして考える必要はない。いわゆる現代の三大ブラウザは
- InternetExplorer:InternetExplorerエンジン
- Mozilla(Firefox):Geckoエンジン
- Opera:Operaエンジン
Mozillaのみ「わざわざ」エンジンに別の名称が使用されていますが(この理由は割愛します)IEやOperaに関しては特に明示的な名称の区別も存在しない。
さて、ここにIEという「ブラウザ」に不満を持つ人間がいたとする。オリジナルのブラウザを作成しようとする時、彼には二つの選択肢がある。
- ブラウザとブラウザエンジンを両方自作する
- ブラウザのみを作り、そのブラウザから既存の「ブラウザエンジン」を呼び出す形で動かす
Donut/BugBrowser/Sleipnirといった、いわゆる「タブ型ブラウザ」は後者の形式で作成されています。その際に「呼び出す」エンジンには、Windowsにデフォルトで入っている/圧倒的なシェアを誇る/むしろ他に候補がないというレベルだったIEが選ばれることが多く、そのことに対する疑問は(少なくとも利用者の大半にとって)非常に小さいものだった。
・・・で、ここで「MozillaがIEを超える日は来るのか」のスタートラインに立つのですが、Mozillaグループが作成した「Gecko」というエンジンに対する注目が、近年ようやく「リアル」になってきたように思えるのです(正直言って少し前までは「Gecko良い」という台詞は「アンチゲイツ」「オープンソース萌え」といった思想的な問題とかなり親密な関係にあったように思える)。
それはIEという「ブラウザエンジン」のセキュリティの弱さ(ブラウザにおいて根本的な処理をしているのが「ブラウザエンジン」であるため、いわゆる「IEのセキュリティホール」とは大半が「IEエンジンのセキュリティホール」であり「エンジンにIEエンジンを利用しているあらゆるブラウザにおいて発生する穴」です)やGeckoのエンジンとしての優秀性によるものでしょう。HotWiredの記事等では、その流れは「IEブラウザへの不信感」といった文脈になっていますが、セキュリティ的な穴や描画能力等の差、「MozillaがIEを超える日は来るのか」で触れている「ブラウザ」としての機能性を考えた場合、現実にはそれは「IEブラウザへの不信感」「Mozillaブラウザへの移行という流れ」ではなく「IEエンジンへの不信感」「(IEエンジン以外の)他エンジンへの移行という流れ」「(現時点で唯一Geckoエンジンを使いこなすことが出来るブラウザである)Mozillaブラウザへの流れ」ではないのか?というのが僕の主張です。
そして、「IEエンジンを利用している(=IEコンポーネント)」ということに(少なくとも利用者の大半は)疑問を抱かなかったタブ型ブラウザの世界において「Geckoエンジンを取り入れる」という流れが少しずつ出来つつある。
現時点において、ブラウザエンジンという世界においてIEが一人勝ちを収めていることは紛れもない事実です。シェアが減ったと騒いだところでそれは「95%を切った」という話で。そして、その「95%を切ったことで騒がれる」IEエンジンを一切利用しない・・・つまりGeckoエンジンのみを利用する・・・ことは、少なくとも現時点では、そしておそらく今後も当分の間は絶対多数のユーザーにとって「現実的」ではない。この世にはIE専用サイト(=IEエンジン専用サイト)というのが数多く存在する。Mozillaにも「このページをIEで開く」という皮肉な拡張機能が存在していたりする。そういった意味での「現実性」や、そもそも「今使っているブラウザからわざわざ乗り換えるのは・・・」という抵抗、そして、それと同時に拡大していくであろうIEエンジンへの不信感を考えた場合、MozillaやIEブラウザは決して天下を取ることが出来ないのではないか、と僕は思うのです。MozillaやIEブラウザが今後どんなにバージョンアップを重ね、例えば現時点でのSleipnirの機能に追い付いたところで、MozillaやIEブラウザは決して「エンジンを自由に選べる」という機能を搭載しない。その二ブラウザにおいて「自分達のエンジン」は絶対の存在だから。対して、そもそも最初の段階でIEエンジンを選んだということに(そういった意味での)理由がないタブ型ブラウザはGeckoを取り入れることが出来る。
まぁ「一年後」と言ってみたりしますが、いつか「一つのブラウザでIEエンジン/Geckoエンジンを切り替えながらネットサーフィン」が現実的になる日が来るならば、その「一つのブラウザ」は決してMozillaでもIEでもない。それを実現するのは「IEコンポーネント」「でもタブとか色々IEブラウザにはない機能があるよ」から始まり高機能化の中でGeckoを取り入れる「タブ型ブラウザ」です。
- 普段はGeckoエンジンを使って、IEでないと表示が崩れるサイトやらはお気に入りレベルでIEエンジンを使用する
- 普段はIEエンジンを使って、アレげなサイトに行く場合はGeckoエンジンを使用する
まぁどちらでもいいと思いますが、「ブラウザマップ」というものがそういう類の問題に変質していくとすれば(つまり上の二択が成立した時、ブラウザエンジンは現状でのFlashやJavaScriptのオン/オフと同レベルの問題になる)。
現時点で「エンジン切り替え」という機能を取り入れている主要ブラウザは下記です。
- Sleipnir(1.70より正式実装予定)
- Lunascape(2.0より実装予定)
- DonutRAPT
- DonutP
- Maxthon(海外製)
- Sylera2(メインがGeckoでIEエンジンにも対応)
ただ、僕の個人的感想としては、現時点で「エンジン切り替え」に関して十分な機能性/操作性を実現しているソフトは存在しないように思えます。(めるてぃさんが書かれているように)操作性の違いをブラウザで埋めるのは非常に大変な事だと思いますが、各ブラウザ作者さんに期待したいと思います。一年後のネトランで扱うブラウザ(ぇ)がどれなのかは現時点では何とも言えないですが、これまで「タブブラウザの特徴」としてあまり表に出なかった「エンジンを自由に切り替えられる」という方向性が、今後は注目だと思います。
※
初稿が調査不足で不適切な表現があったので7/18昼にリライトしています。コメントで指摘頂きありがとうございました。

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